法学者によるクラブ合法化法(風営法改正)徹底分析

今日、クラブを合法化する風営法改正案が国会に提出されました。実際は、廃案になってしまった法案の出し直しです。今日は、風営法改正案の解説を書いてみようと思います。

<概要>

クラブ営業の規制緩和 風営法改正案を改めて閣議決定 :日本経済新聞

政府は3日、クラブなどダンス営業の規制を緩和する風俗営業法の改正案を改めて閣議決定した。昨年10月にいったん閣議決定したが、衆院解散で廃案となっていた。通常国会での成立を目指す。 現行法は踊りや音楽、飲食を客に提供するクラブを風俗営業に指定し、営業時間(原則午前0時まで)や店内設備などを厳しく制限している。改正案は、店内の明るさ(照度)の基準などをクリアすれば風俗営業から外し、24時間営業を可能にする。 照度基準は、飲食スペースなどを映画館の休憩時間と同じ程度の10ルクス超に保つ案を軸に検討。基準を満たさなければ引き続き風俗営業となる。照明が変化するダンスフロアは基準の対象外とする方向だ。警察庁が照度の測定方法について意見募集し、規則で定める。 飲食を伴わないダンススクールなどは、風営法の対象から完全に除外する。

記事を読むだけで概要は分かりますが、説明を加えると、現在のクラブを3分類し、10ルクス以下は引き続き「風俗営業」(新第2号営業)として規制し、10ルクス超で深夜営業かつ酒類提供を行うクラブは「特定遊興飲食店営業」として規制します。

また、10ルクス超であっても、酒類提供を行わなかったり、24時までに営業を終えるクラブは、ただの「飲食店営業」になります。

しかし、3番目のようなクラブの営業形態はほぼないと思うので、実質的には2つの類型に分かれることになります。

簡単に結論だけ書くと、10ルクス超の「特定遊興飲食店営業」に該当するクラブは深夜営業規制がかかりませんが、それより暗い「風俗営業」に該当するクラブは従来どおり深夜営業規制がかかり、政府が定めた基準に従い、都道府県が特別な地域を定めることで、その地域内だけで深夜営業規制を緩和する仕組みになっています。

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(出典:警察庁HP http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kokkai/270303/06_sankou1.pdf

<詳細分析>

以下、条文を読んで詳細に分析してみます。

まず、「特定遊興飲食店営業」について、改正法案では第2条第11項で以下のように定義されています。

(用語の定義)

第二条 (略)

11 この法律において「特定遊興飲食店営業」とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前六時後翌日の午前零時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)をいう。

(出典:警察庁HP http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kokkai/270303/03_sinkyu.pdf

「風俗営業に該当するものを除く」とあるので、「風俗営業」に該当していれば「特定遊興飲食店営業」にならないのだが、「風俗営業」の定義は改正法案の第2条第1項第2号にある。

(用語の定義)

第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

一 (略)

二 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)

(出典:警察庁HP http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kokkai/270303/03_sinkyu.pdf

以上により、営業所内の照度が10ルクス以下の場合、「風俗営業」になるわけだが、「風俗営業」に該当すると、原則として深夜営業ができない(第13条第1項本文)。しかしながら、但書を読むと、例外的に深夜営業ができる場合がある。

(営業時間の制限等)

第十三条 風俗営業者は深夜午前零時から午前六時までの時間をいう。以下同じ。)においては、その営業を営んではならないただし、都道府県の条例に特別の定めがある場合は、次の各号に掲げる日の区分に応じそれぞれ当該各号に定める地域内に限り、午前零時以後において当該条例で定める時までその営業を営むことができる

一 都道府県が習俗的行事その他の特別な事情のある日として当該条例で定める日 当該事情のある地域として当該条例で定める地域

二 前号に掲げる日以外の日 午前零時以後において風俗営業を営むことが許容される特別な事情のある地域として政令で定める基準に従い当該条例で定める地域

(出典:警察庁HP http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kokkai/270303/03_sinkyu.pdf

具体的には1号と2号が挙げられていますが、1号はどうでもいいと思います。何らかの特別なイベントがある日に特別に深夜営業を認めようということでしょう。

問題は2号です。通常の日は、特別な事情がある地域として政府が定めた基準(政令)に従って、都道府県が条例で定めた地域しか深夜営業ができないわけです。

なお、この条文を受けた現行の風営法施行令(政令)で定められた基準は以下のようになっています。

第一号のロはどうでもよく住宅とかの近くはダメと言っているに過ぎません。

ここでの問題は第一号のイです。1平方キロ(1キロ×1キロ)あたりに300程度の風俗店や深夜営業のバーとかレストランがないといけないと言っているわけですが、これがどれくらいなのかあまり想像できません。さすがに渋谷とか六本木は該当するのだろうか。

いずれにしても、この政令の条文は第一号で「午前一時まで…」と書いてあるとおり、法律が改正される前の現行条文に過ぎないので、風営法の改正案が国会で成立すれば、この政令の条文も併せて見直すことになるのだと思います。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令 (昭和五十九年政令第三百十九号)(抄)

(法第十三条第一項の政令で定める基準)

第七条の二 法第十三条第一項の政令で定める基準は、次のとおりとする。

 一 午前一時まで風俗営業を営むことが許容される特別な事情のある地域(以下「営業  延長許容地域」という。)の指定は、次のいずれにも該当する地域内の地域について  行うこと

  イ 店舗が多数集合しており、かつ、風俗営業並びに深夜(午前零時から日出時まで   の時間をいう。以下同じ。)において営まれる酒類提供飲食店営業(法第二条第十   一項第三号に規定する酒類提供飲食店営業をいう。以下同じ。)及び興行場営業    (興行場法第一条第二項に規定する興行場営業をいう。)の営業所が一平方キロメ   ートルにつきおおむね三百箇所以上の割合で設置されている地域であること。

  ロ 次に掲げる地域に隣接する地域でないこと。

  (1)住居集合地域

  (2)その他の地域のうち、住居の用に併せて商業等の用に供されている地域で、    住居が相当数集合しているため、深夜における当該地域の風俗環境の保全につき特   に配慮を必要とするもの

 二 営業延長許容地域の指定は、風俗営業の種類、営業の態様その他の事情に応じて良  好な風俗環境の保全に障害を及ぼすこととならないよう配慮するとともに、当該地域  における法第四十四条 の規定による団体の届出の有無及び当該団体が関係風俗営業者  に対して行う営業時間の制限その他の事項に関する法又は法に基づく命令若しくは条  例の規定の遵守のための自主的な活動にも配意すること。

なお、第13条(営業時間の制限等)の主語は「風俗営業者」となっているため、「特定遊興飲食店営業者」には本条は適用されません。

つまり、10ルクス以上の照度のクラブは原則的にも深夜営業が可能になるということす。ただし、当然営業の許可は必要です。

(営業の許可)

第三十一条の二十二 特定遊興飲食店営業を営もうとする者は、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない

(出典:警察庁HP http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kokkai/270303/03_sinkyu.pdf

10ルクスとは

ところで、10ルクスとはどれくらいなのでしょうか。

法文案を見ても分かりませんが、冒頭の日経新聞の記事によると、10ルクスとは「休憩時間の映画館」と同等の明るさのようです。

「休憩時間の映画館」の明るさがピンと来ませんが、これくらいですかね。

http://www.flickr.com/photos/35943421@N00/2646935127

photo by *saipal

http://www.flickr.com/photos/37601286@N06/5364719668

photo by gsz

感覚的には、これより暗い(10ルクスより暗い)クラブは割とあるような気がします。そういったクラブは「風俗営業」に該当し、前述の政令の基準と都道府県の条例の内容如何によって、合法か違法か分かれてくるということになります。 

また、10ルクスかどうか判定する「照度」とはどこを基準に判定するのかという問題があります。改正後の条文案を見ても「営業所内の照度」としか書いていないので、法文上はどこの照度を測るのか分かりません。

(用語の定義)

第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

一 (略)

二 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)

(出典:警察庁HP http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kokkai/270303/03_sinkyu.pdf

 「営業所」=クラブの箱内といっても、明るさは場所によってかなり違います。通常はダンスフロアの方が暗くて、バーカウンター付近はもう少し明るいでしょう。

法文上は判定基準が全く分かりませんが、冒頭の日経新聞の記事を読むと、

クラブ営業の規制緩和 風営法改正案を改めて閣議決定 :日本経済新聞

照明が変化するダンスフロアは基準の対象外とする方向だ。警察庁が照度の測定方法について意見募集し、規則で定める。

とあります。照度の測定方法は今後検討ということらしいですね。暗い所を基準に照度を測定するようなことにならないでほしいです。

 

以上。たいしたこと書いてないけど。

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