VANITY摘発に見る風営法とクラブの関係②

先日、VANITYと風営法の関係について風営法の条文を分析した記事を書きました。

www.puashton.net 

今日は、風営法の処分の基準についてもう少し考えてみます。

今回のVANITY摘発はテレビ、新聞でかなり報道されているようです。全部は紹介できませんが、いくつかピックアップして紹介してみます。

FNN
六本木にある都内最大のクラブ摘発 経営者の男ら3人現行犯逮捕
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00246797.html

東京新聞
都内最大級クラブ摘発 ダンスホール無許可営業容疑
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013052702000222.html

注目すべきは以下の点です。

●何の摘発か。

・「港区六本木のクラブ「VANITY RESTAURANT TOKYO」の経営者・小原 健容疑者(31)と、DJの犬飼健二容疑者(35)ら3人は、ダンス営業や深夜営業の許可を受けないまま、深夜1時以降も、店内でダンスをさせていたとして、現行犯逮捕された。」(FNN)
・「深夜に客にダンスをさせたとして、警視庁は二十七日、風営法違反(無許可営業)の疑いで、都内最大級のクラブ「バニティ・レストラン・トウキョウ」(東京都港区六本木五)を摘発し、運営会社社長小原健容疑者(31)=渋谷区本町三=や従業員の男ら三人を現行犯逮捕した、と発表した。」(東京新聞)

●摘発の理由は何か。

・「警視庁によると、「VANITY」は明け方まで営業していて、周辺の住民によるものや、店内でのトラブルにからんだ110番通報が多発していたことなどから、今回の摘発に踏み切ったという。」(FNN)

・「都公安委は三年前から、バニティの前身の店舗を含めて計四回、無許可のダンス営業の改善などを求める指示処分を出していた。周辺住民からは「通行の邪魔になったり、ゴミを散らかしたりして迷惑」「朝から小学校の通学路で客が大声を出している」と苦情も相次ぎ、警視庁は摘発に踏み切った。」(東京新聞)

報道をまとめると、
・摘発の内容:風営法違反(無許可営業)につき現行犯逮捕
・対象者:経営者及びDJ
・原因:注意や立ち入りを行うも改善されず、トラブルが相次いでいた
ということになります。

各報道が出るまでは、営業停止をかけるための立入検査だと思っていたのですが、実際は立入検査ではなく捜査だったようです。

何が違うんだと疑問に思われる方が多いかもしれません。ここらへんは複雑な話なのでちょっと解説が必要ですね。

一言で言うと、行政処分(営業停止命令)と刑罰は全く異なるもの、ということです。
前者は行政庁(要するに役所)に権限があり、後者については警察が犯罪捜査・被疑者逮捕を行い、その後、検察による起訴を経て刑事裁判で実際の刑が決まることになります。

刑事手続は非常にややこしいと思いますが、法務省HPに解説があったので、詳しく知りたい場合はこちらを。
http://www.moj.go.jp/content/000003698.pdf

風営法でややこしいのが、行政処分を行う行政庁も警察(公安委員会)ということです。
行政庁は法律によって色々決まってきます。たとえば、農業関係の法律だったら農林水産大臣だし、交通関係の法律だったら国土交通大臣という風になります。
また、地方分権が結構進んだ結果、○○事業の許可という権限が国ではなく地方公共団体になっている場合も多い。この場合、都道府県知事が行政庁ということになります。

風営法の場合、風俗関係ということで、国家公安委員会が所管する法律であり、実際の許可権限を持つのは、都道府県公安委員会です。

だから、風営法に基づき、風俗営業の許可を出したり、営業者の事務所に立ち入ったり、行政処分として営業停止を命じたり許可取消を行ったりするのは、都道府県公安委員会(要するに警察)が行うことになります。
犯罪捜査も警察が行うので、ここら辺が非常にややこしいですね…。

ちなみに、行政法規による立入権限をもとに犯罪捜査(刑事捜査)をやってはいけないというのが原則です。当然風営法に関しても、風営法上の立入検査は犯罪捜査のために行ってはならないと考えられます。

結局どういうことかと言うと、今回のVANITY摘発報道を見ると、経営者が現行犯逮捕されているので、風営法という行政法規上の権限を根拠に営業停止をかけるために立ち入りしたわけではなく、令状を取って犯罪捜査のために立ち入りを行ったということです。

また、前回の記事では、VANITYは営業停止になるだろうと書きましたが、厳密に言うと、営業停止は今回の摘発とは直接の関係はありません。

営業停止をかけるためには、風営法という行政法規上の営業停止の要件をクリアした上で、刑罰とは別に行政処分として営業停止を行う必要があります
ただ、経営者逮捕まで踏み切っている以上、警察は行政法規上の営業停止をかける十分な証拠を既につかんではいるのだとは思いますが(少なくとも、経営者が捕まっているのに店は営業したままという状態にはしないいでしょうね)。

まとめると今回の件は、
・犯罪捜査→経営者逮捕(風俗業無許可営業)であって、
・行政処分(深夜飲食店営業停止)は別に行われるということになります。

なお、営業停止は単なる行政処分なので、基本的には行政庁が勝手にできます。
ただ、行政処分をされた側から不服申し立てを行ったり、営業停止命令という行政処分の取り消しを求めて行政訴訟を起こすことはできる仕組みがあります。

ところで、今回の摘発は報道を見ると、行政指導を行ったにもかかわらず改善がなくトラブルが多発していた、とありますね。

おそらく行政指導を行ったにもかかわらず、改善が行われなかった結果、刑事手続(経営者逮捕)に踏み切ったということになるのでしょう。

ただ、最近のクラブ摘発を見ていると、経営者逮捕だけでなく、そのまま店がつぶれるというところまでいっているので、今後営業停止がなされる可能性が高いと思います。

ちなみに、この営業停止は、風俗営業ではなく深夜飲食店営業の営業停止になります(風俗営業はそもそも無許可なので、届出をしている深夜飲食店の営業を停止されるということになります)。

つまり、普通のバーとかラウンジの形態でも営業できなくなるということで、ダンスだけ禁止すればOKというわけではないわけです。

ここまで見てきて、今後のクラブの展望を考えてみます。

報道を見ると、今回の件は度が行き過ぎていたことが問題だったと考えられます。
他のクラブも単に無許可で風俗営業をしていたくらいなら大目に見てもらえ、度が過ぎると摘発されてしますよということかもしれません。

警察がどこのクラブが無許可営業(深夜0時以降に客がダンスしている)しているか知らないはずはないので、おとなしくしていれば、事実上見逃してもらえるということかもしれませんね。

あとは、警察が入りそうになったら、音楽を止めて客がダンスしないようにするとか。
そうすればただのバーと同じで単なる深夜飲食店営業になるので、風営法上届け出さえしていれば何の問題もありません。

以前クラブで音楽が突然止まったことがあったが、おそらく警察対策なのでしょう。クラブ側も色々考えているようです。

基本的に単なる深夜飲食店として営業しているので、HPを見てもはっきりクラブとは書いてなくて、ラウンジといったような形態であるとされています。例えば、そもそもVANITYは店名にRESTAURANTと書いてあります。

でも結局そんなのはすぐにばれて、度が過ぎるとつぶされてしまうということでしょうね。仮に、度が過ぎなければOKというのが警察の判断基準だとしたら、クラブ側も客側もある程度の節度をもってやっていくことを願うばかりです。

最後に補足ですが、風営法という行政法規上の報告聴取や立入検査の運用について見てみます。

前述のとおり、風営法上、公安委員会は風俗営業者や深夜飲食店営業者に対して自由に立ち入りをできる権限を有しています。
しかし、運用上は、違反と疑わしい店舗に片っ端から立ち入るのは事実上不可能であり、指導何回で立ち入りとか、行政処分の基準を定めているのが普通だと思われます。

風営法についても、警察庁のHPに基準が出ています(ただし、平成14年のものなので、古いかもしれません)。
http://www.npa.go.jp/safetylife/kankyo/unyoukijun.pdf

●「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」
第31 報告及び立入りについて(法第37条関係)
(1)立入り等の限界
立入り等の行使は、法の施行に必要な限度で行い得るものであり、行政上の指導、監督のため必要な場合に、法の目的の範囲内で必要最小限度で行わなければならない。
したがって、犯罪捜査の目的や他の行政目的のために行うことはできない。
例えば経営状態の把握のために会計帳簿や経理書類等の提出を求めたり保健衛生上の見地から調理場の検査を行うこと等は、認められない。
また、立入り等の行使に当たっては、いやしくも職権を濫用し、又は正当に営業している者に対して無用な負担をかけるようなことがあってはならない
(2)報告又は資料の提出の要求と立入りの関係立入りは、直接営業所内に入るものであるため、営業者にとって負担が大きいので、報告又は資料の提出で行政目的が十分に達せられるものについては、それで済ませることとし、この場合には立入りは行わない。

これによると、立入りは、営業者にとって負担が大きいので、報告で済む場合はそれで済ませるとされています。

また、行政処分の基準についても警察庁のHPにあります。これも平成18年で少し古いです。
http://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/seikan/seikan20060424-3.pdf

●「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令等の基
準について」
(指示処分との関係)
2 風俗営業者又は店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業、無店舗型電話異性紹介営業、飲食店営業若しくは接客業務受託営業を営む者に対する取消し、営業停止命令(法第26条第2項の規定に基づくものを除く )又は営業廃止命令は、それぞれ当該処分を行うべき事由(以下「処分事由」という)について指示処分を行い、当該指示処分に違反した場合に行うことを通常とする。
ただし、法に基づく処分又は法第3条第2項の規定に基づき付された条件に違反した場合のほか、次のような場合は、指示処分を行わずに、直ちに取消し、営業停止命令又は営業廃止命令を行っても差し支えない。
(1) 同種の処分事由に当たる法令
違反行為であって悪質なもの(法に掲げる罪に当たる違法な行為及び政令で定める重大な不正行為を含む )を短期間に繰り返し、又は指導や警告を無視する等指示処分によっては自主的に法令を遵守する見込みがないと認められる場合
(2) 指示処分の期間中に、当該指示処分には違反していないが、当該指示処分の処分事由に係る法令違反行為と同種の法令違反行為を行った場合
(3) 罰則の適用がある法令違反行為によって検挙された場合(起訴相当として送致した場合に限る )。
(4) 短期20日以上の量定に相当する処分事由(法に基づく条例の違反に係る処分事由であって各都道府県において短期20日以上の量定が定められているものを含む ) に当たる法令違反行為が行われた場合
(5) (1)から(4)までに掲げる場合のほか、法令違反行為の態様が悪質で、善良な風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある重大な結果が生じた場合
(量定)
3 取消し又は営業停止命令(法第26条第2項又は法第30条第3項の規定に基づく場合を除く )の量定(以下単に「量定」という)の区分は、次のとおりとし、各処分事由に係る量定は、別表に定めるところによるものとする。
(1) 風俗営業、飲食店営業、興行場営業、特定性風俗物品販売等営業又は接客業務受託営業
A 風俗営業にあっては取消し。飲食店営業、興行場営業、特定性風俗物品販売等営業及び接客業務受託営業にあっては、6月の営業停止命令。
B 40日以上6月以下の営業停止命令。基準期間は、3月。
C 20日以上6月以下の営業停止命令。基準期間は、40日。
D 10日以上80日以下の営業停止命令。基準期間は、20日(別表の処分事由1 (27)遊技機変更届出義務違反にあっては基準期間1月)
E 5日以上40日以下の営業停止命令。基準期間は、14日。
F 5日以上20日以下の営業停止命令。基準期間は、7日。
G 営業停止命令を行わないもの(指示処分に限り、当該指示処分に違反した場合に当該指示処分違反を処分事由として営業停止命令を行う)。
H 5日以上80日以下の営業停止命令(別表の処分事由1(28)条例の遵守事項違反については、各都道府県において5日以上80日以下の範囲内で定める量定による。)
その基準期間は、以上の基準に準じて各都道府県において定めるところによる。
(2) (略)
(取消し)
4 取消しは、9前段に定める場合及び量定がAである処分事由がある場合のほか、3及び7から9までに定めるところにより、量定の長期が6月に達した場合で、10(2)アに掲げる処分を加重すべき事由が複数あり、又はその程度が著しい等の事情から、再び法令違反行為を繰り返すおそれが強い等営業の健全化が期待できないと判断されるときに行うものとする。
(営業廃止命令)
5 営業廃止命令は、3及び7から9までに定めるところにより、量定の長期が8月に達した場合で、10(2)アに掲げる処分を加重すべき事由が複数あり、又はその程度が著しい等の事情から、再び法令違反行為を繰り返すおそれが強い等営業禁止区域等において営業を継続させることが妥当でないと判断されるときに行うものとする。

営業停止命令の基準についても、かなり詳しく公表されていますね。取り締まる側も、違法=即営業停止ではない、と明言しているので、クラブ側には、取り締まられたり、逮捕される前に、適度に節度を守って対応していただきたいと思います。

少なくとも、報告しろと言われたり、立入検査に入られたりした場合は、ある程度言うことを聞いて、潰されない程度にやっていってほしいと願います。

 ※クラブと風営法の関係は以下の本が詳しいです。色々な論者が様々な観点から分析しています。
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